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床屋

俺は美容室なんかちゃらちゃらした所には行かねぇ。
男なら床屋だろうがッ! 女なんかに髪は触らせねぇ!(なにこの偏見)


今日はかかりつけの床屋を浮気して、少し前から気になっている床屋に行ってみました。店舗前から見たときに、ポッチャリとした坊主のオッチャンが一人でやっているようだったので、一度行ってみようと思っていたのです。

床屋の何が嫌って、カットと髭剃りで選手交代することが多い。そして大体の床屋は夫婦でやっているところがほとんどで、髭剃りは嫁の仕事としているところが多い。せっかくカットはドキドキしながら可愛いオジサンにやってもらったのに、髭剃りに出てきたのはオバチャンだと、すっかり萎えてしまう。


少しの期待を胸に店に入ると、先客がすでにカットを終えて、髭剃りをしていた。やはりここはオッチャン一人でやっているようだ。他に店員がいない。オッチャン店主は僕を一瞥しただけで、「いらっしゃい」も何も無かった。あれ?何かここのしきたりを間違えたかな? まぁいいやとソファに座る。予約してないけど大丈夫かな?と思っていたが、目の前の壁に「申し訳ありませんが、当店は予約は一切受け付けておりません」という貼り紙が貼ってあった。へ~、めずらしい床屋だな。 他にもたくさんの貼り紙が貼ってあるが、白髪染めや顔マッサージをプラス料金でやっていることを宣伝するもので、あまり気にも留めなかった。

しかしこの店は静かだ。
テレビは付いているが、静かなのだ。
先客は頭頂部が少しだけ禿げていて、両サイドの耳上あたりに白髪が多い40代くらいの中年で、おそらく常連客だろうと感じた。大体オッチャンがやっている床屋というのは、常連客と店主が、野球や競馬の話しをやたら五月蠅く談笑している風景が常だが、ここはとても静かである。ただ黙々と作業が続いていくのである。


それは、先客がシャンプーを終えて、ドライヤーで整髪を行っているとき、僕は理解した。先客は、右側からの七三に分けてくれ、という髪型の注文を手でジェスチャーで示し、店主は言葉になっていないような声で反応したのだ。

改めて壁に貼られた壁紙を見渡すと、端のほうに「手話サークル」の貼り紙が貼ってあった。なるほどそれで静かなわけだ。


先客が金を払い出て行った。最後まで言葉は交わされなかった。当然だが。
さぁ、次は私の番である。

椅子に座る前にシャンプードレッサーの横に、「私は聴覚障害者です。」と書かれた三角柱の卓上ポップを見つけた。店主は私が一見であることを判ったのであろう、髪型のサンプルが載った厚紙を見せてきた。しかしそこに掲載されたものはどれもピンと来なかったので、ジェスチャーで示そうとしたところ、ちょっと待って、と言うように手の平を前に出し、紙とボールペンを渡された。そこに僕の希望する髪型を簡単に書いて、渡したところなんとなく理解して施術が始まった。

会話が無いというのは、これはこれでリラックス出来るものである。こうして接近して店主を見てみると、坊主頭に白髪がごま塩のようにまぶされて、なかなか可愛い。マスクをして顔は目が出ているだけで、他は想像で補うしかないのだが、たぶん可愛い。僕は首から上に全神経を集中させ、店主の手が、僕の顔や耳、首筋に触れるのを感じるのだ。


出来上がり具合は、いつもとは全然違う、ファッション性も何もないただの短髪になってしまったけど、これはこれで「美容室ではなく床屋に行ったんです!」と主張した感じで気に入った。

お金を払って、僕は「ありがとう」とかろうじて知っている手話をしたところ、虚をつかれたように目を見開いた後、すぐに目が細くなって目尻が下がり、同じ手話で返事が返ってきた。


また来月、行ってみよう。
もうちょっと手話を覚えたいところだ。



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すてきな

最後のところ、ちょっとトキメキ。
笑顔で返されると、嬉しいですよね~。

障害があっても接客業に就こうと思えるって並大抵のことではありませんよね。
なんだかドラマを感じます……

僕もあまりこういう場で会話が盛り上がらないタイプなので
そういう方のほうがありがたいかもしれません。

行きつけの床屋はマダム(おばちゃんと呼ぶにははばかります)が一人で切り盛りしています。
あんまりイケメンだと違う部分が盛り上がって困りそうなのでちょうど良いかな、と……

床屋の何がいいって顔を剃ってくれるところですよね。

こんばんは

先ほどはありがとう。
この記事への感想をいい損ねたのだけれど
KO2君とこのご主人との距離感がとてもいいと思ったのだよ。
リアルの距離感だけでなく、この文章の距離感がとてもいい。
そういうことを言いたかった。

銭湯は俺が肩凝って眠かったのでウダウダしたかっただけだ。
そんなことで今更恥ずかしがるでないw


>かいおんさん
このオッチャンがただの聴者であれば、
このような笑顔は返ってなかったかもしれません。
終始、無言の状態が続いて、
最後の最後に出来たコミュニケーションで出た笑顔が、
何倍も嬉しいものがありますね~。

>壱介さん
私にとってろう者の方と接するのは初めてでも無かったので、
戸惑うようなことはまったくありませんでしたが、「凄いな」と思いました。
どのような髪型にして欲しいか伝える部分って、
床屋にとっては非常に重要なところじゃないですか。
客の声を聞いてあげる役目のバイトも嫁もいなくて、
ここまで築き上げたのは、立派なことだと思います。
特別扱いすることは良くないですが、率直な感想として「凄い」。そしてカワイイ!!

床屋はタイプな人に刈ってもらいたいんですよね~。マダムなんて嫌だ…。
違う部分が盛り上がっても、マント被されてりゃ判らないんじゃないですか?(笑)
なんだったら、マントの下で露出してシコsブフッ∵(´ε(○=(゚∀゚ )

顔剃りは、いつもカミソリ負けしてしまうので、拒否しています。
今回は勿論、お願いしましたがね。今なお、ヒリヒリしています。

>よれ某さん
どうもでした。退屈させてなければ良いのだけど。
くだらない話しが面白い(笑)

こんな事書いたら、台無しになってしまうけど、
最近の記事のなかでは、うまく文章が書けたと満足しています。
勿論、作り話などではないし、実体験の時間軸に沿って書いていますが、
いくつかの布石が、パーッと解消されるような、
そんな推理小説のような文章を読みとっていただければ幸いです^^;

銭湯は、本当に恥ずかしいのです!(笑)
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KO2

159*64*33
京都在住。
チビポッチャリーマン。
いつも何か考え込んでいます。

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